(2007年05月18日)

[インタビュー] NY原油、68ドル、通年高値の公算も/三井物産フューチャーズ上席ストラテジスト/江守哲氏

米国では、5月26日のメモリアルデーから始まるドライブシーズンを前に、ガソリン需給ひっ迫懸念が生じ、これによりNY原油も上昇する場面がみられる。今後のガソリン需給の見通しや世界石油事情および本年の原油価格の見通しについて、三井物産フューチャーズ上席ストラテジストの江守哲氏に聞いた。

――現在の米ガソリン需給動向についてどう見ているか。

「まず、米国における原油在庫については問題ないと思われる。輸入はおよそ日量1000万バレル程度にも増えてきており、供給は安定している。これに対し5月下旬からドライブシーズンを迎える米国内のガソリン需要は強い。にも関わらず、ガソリンの輸入が少ないことが需要に影響している。前年と比べると輸入はおよそ1500万バレルも少なく、これにより現在のガソリン需要は、前年比1・6日分の供給が減少した」

――米国のガソリン輸入が減少した背景は。

「現在の米国のガソリン需要を考えると、ヨーロッパからの輸入を増やさなければ足りない状態にある。しかし、ヨーロッパはディーゼル油の石油精製が多く、ガソリンは少ない。この状況により、第1・四半期のガソリン輸入は減少したとみられる」

――ガソリン需要が現在の原油市場に与えている影響は。

「米製油所の稼働率が上がっていないことが、ガソリン需給ひっ迫懸念を強くしている。現在のガソリン需要を満たすには、稼働率を上昇させて輸入を増やす必要がある。現状では製油所の絶対数が足りていないのではないか」

「これにより原油が余剰化している。WTI原油の受け渡し場所である、クッシングの在庫増も余剰化した1因とされている。一方、ガソリン在庫が減少を続けたことから、原油とガソリンとの価格差(クラックスプレッド)が広がった。このことから、現在のNY原油は国際指標とされているものの、米国内のマーケットをより強く反映しているのではないか」

――今後の米ガソリン価格の見通しは。

「ガソリン価格のピークが近いとみている。14日現在、ガソリンの小売価格はガロン当たり3・103ドルと史上最高値を記録しており、ここからガソリン価格は上がりにくいのではないか」

「また、ガソリン価格は個人消費と強くリンクしている。ガソリン価格と個人消費のチャートからこのカイ離率を見ると、現在のカイ離幅が大きいことがわかる。過去の経験則からこのカイ離幅が大きくなると、ガソリン相場は下落している。これにより、今後は下落する可能性が高い」

――ナイジェリアやイランなど産油国の地政学的リスクについて。

「米国は、ナイジェリアから原油を1割超輸入していることから、今後の影響は避けられないのではないか。しかし、イラン核開発問題はかなり織り込まれた。米国とイランはイラク問題で直接協議を行う予定もあり、両国の関係は改善に向かっている。この先和解の方向へ進めば、NY原油は急落するだろう。また、イランの現状を考えれば、原油の輸出を禁止するような状況を自ら作り出すとは考えにくい」

――世界の石油状況についてはどう見るか。

「OECD(経済協力開発機構)加盟国の在庫は、OPEC(石油輸出国機構)の減産などを受け減少しているが、供給不安にまで至っていないとみている。一方、他のコモディティが需給ひっ迫などで軒並み高騰している。これに対し、原油は世界的に需給タイトと言われながらも、実際には上値を抑えられている。これは、原油のファンダメンタルズ(需給要因)が他のコモディティと変わっているからではないか」

――すると本年の高値はすでに出たことになるのか。

「3月下旬に瞬間的に付けたバレル当たり68ドル台。これが、本年の高値の可能性もあり得る。ただ、夏場のハリケーン襲来や、イラン核開発問題が悪化すればさらなる高騰もある。このハリケーンやイラン問題などはあくまでも可能性であり、2006年にはハリケーン多発が予測されながらそうはならなかった。現在の需給などを見た限りでは、3月下旬の68ドル台が本年の高値となってもおかしくはない」

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