(2008年09月11日)

[特集] 明治物産 受託業務廃止の中で/コストかさみ揺れる経営

明治物産(本社=東京都中央区・鈴木敏夫社長)が、運営コストの増加予想を背景に10月下旬(予定)で受託取引業務廃止を決定したことは業界に衝撃を与えた。他取引員各社の経営も厳しい状況に変わりはなく、こうした同社の動きが波紋を呼んでも不思議ではなくなってきている。

資産を倍に

「資産を増やさないといけない……」。今夏に明治物産の社員が漏らしたこの言葉が、業界の現状を表している。

日本商品清算機構(JCCH)における受託会員の資格基準額を、2009年10月には現在の倍となる、純資産額20億円以上にすることがすでに決定している。

一方、8月の国内4取引所の合計出来高は約400万枚と、今年2番目の低水準に落ち込んだ。これは、前年同月の東京工業品取引所の出来高にすら届いていない。各社は、出来高の落ち込みから手数料が減少する中で、財務基盤を強化しなければならないといったジレンマに陥っている。

次期システムと24時間化

各社の前にコスト増として大きく立ちはだかるのが、来年5月から導入される東工取の次期システムだ。世界最高水準の電子システムだが「何千万、もしくは億単位ものコスト負担になる」と、自社で東工取次期システムに対応することには、依然として慎重な声が相次ぐ。

コスト増は人件費にまで波及する。次期システム導入と同時に、市場はほぼ24時間化するが「24時間化となれば、8時間3勤交代制にせざるを得ないだろう」(取引員)とし、現状より少なくとも人もお金もかさむとする。

コスト増と出来高の減少の中で

次期システムへの対応―。各社は、年初から24時間化に適応することが、経営にプラスになるかどうか様子を見ていた。ただ、前述のように取引所の出来高は低迷し、今も回復の糸口は見えてこない。「24時間化しても、市場の活性化につながるとは限らないのでは」。ある社長は、一般の人が仕事から帰宅した後に晩酌よりトレードをするのだろうか、と疑問を投げかける。 明治物産の08年3月期決算は6年ぶりに赤字に転落したものの、それまでは黒字で推移しており、業界が低迷する中で堅実な経営をしてきたことでも知られている。そんな同社でも、JCCHの資格基準額や次期システムの導入によるコスト負担、一方で出来高の増減を天秤にかけ、出した結論は受託取引業務廃止であった。

こうした天秤にかける動きは明治物産だけではない。今後、他社もJCCHの資産基準額を満たすために受託業務廃止、取次業などへの転換。さらには「統合などがあってもおかしくはない」との市場の見方もある。

一般向けの取引所があれば

各社がビジネスモデルを模索する中、次期システム導入といったプロ市場化は着々と進んでいる。市場関係者は「市場のプロ化は構わない。ただ、我々は今の個人投資家向けの市場を、別に作ってもらえればいい」と、プロと一般投資家は別々の取引所で商いをすれば良いとさえ述べる。 『過渡期』。業界の現状を述べるのに良く使われている言葉である。その一方で、市場が新しく生まれ変わる前に消滅してしまっても不思議ではない、との声すら聞かれるほど言葉とのギャップがあるのもまた事実だ。

ソーシャルブックマークサービスにこの記事(ページ)を登録
ブックマークに追加する